ミホノブルボン

栗毛の快速馬・ミホノブルボンは、「坂路の申し子」という言葉が一番しっくりくる馬だった。

サラブレッドとは、ただ早く走るためだけに人工的に作られた馬である。それゆえに血統が一番大事と言われる中でミホノブルボンは決して一流の血統ではなかった。

戸山為夫調教師(故人)の方針によって、これ以上はないというぐらいのハードトレーニングを課せられ、心肺機能と四肢の筋力を極限まで鍛え上げられた馬。それが、ミホノブルボンなのである。

決して一流の血統でもないし、距離もベストがマイル(1600メートルくらい)と考えられたミホノブルボンに対し戸山為夫調教師は、「私の考えではサラブレッドはすべて、「私の考えではサラブレッドはすべてスプリンターである。日本の競馬は1000メートルから3000メートルの間で行われており、人間でいえば100メートルから300メートルくらいの感覚である。マラソンなら話は別だが、100メートルの選手が300メートルを走れないことはない。だから鍛えることによって距離を克服することが可能なのだ。」といい、実際3000メートルも走りきっている(結果は2着であったが)

また、ずば抜けた能力を持つ馬だけに一流の騎手を乗せず厩舎お抱え騎手を乗せ続けたことに対し、

「名馬であればあるほど名騎手を乗せたいのは人情だ。ビジネスの世界でも、失敗できないプロジェクトの責任者は、ヘッドハンティングしてでも有能な人材をあてがう。競馬でも、負けられないとなればフリーランスの名騎手に騎乗依頼するのが常である。

 しかし、私は大レースであろうと何であろうと、弟子であり所属騎手である小島貞博や小谷内秀夫を乗せてきた。乗せてもらえないジョッキーの悔しさや悲しさを、私自身が騎手時代にイヤというほど味わってきたからだ。とくに、熱心に調教までつけたというのに、いざレースという段になって他の騎手に取って変わられるほど悔しいことはない。普段努力した人間が報われないということほど馬鹿げた話はない」

ミホノブルボンを語る時に戸山為夫という男を思い起こさないことはないほどである。

それは、ミホノブルボンが引退するとともに戸山為夫が死去し厩舎も解散したことも印象に残る要因のひとつである。

 

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